住宅を購入する人の多くは、住宅ローンを利用して資金を用意します。
その場合、どの金利タイプを選ぶかによって返済の負担が大きく変わってきます。
利率ばかりを見て住宅ローンを選ぶと、失敗してしまう可能性も…。そんなことにならないよう、金利タイプごとの借り入れ方法の違いや注意点をしっかりと把握しておきましょう。
住宅ローンの金利タイプとは、金利の固定期間を表すものです。
住宅ローンには当初借り入れしたタイミングの金利が適用されますが、金利タイプによっては途中で別の金利に切り替わります。金利タイプには、次の三つがありますので覚えておきましょう。
全期間固定型は、文字通り当初借り入れをしたタイミングの金利が返済の全期間にわたって適用されるタイプです。
通常の住宅ローンは最長35年間借り入れができるので、35年間にわたって同じ金利が適用されます。
メリットは金融政策などの動向を受けて途中で市場金利が上がっても、影響を受けずに済むという点です。毎月の返済額が当初の予定と変わらないため、途中で返済額が変わって慌てる心配がありません。
デメリットは、変動金利に比べると利率が割高になるという点です。ただしここ数年は超低金利市場が継続しているため、全期間固定型の金利も多くの銀行では1%台前半で推移しています(2020年6月時点)。
たとえ途中で市場金利が下がったとしても、返済額には反映されません。
返済完了までの返済計画が立てやすく、資金にあまり余裕がない人に適しています。
変動金利型は、市場金利の動向を受けて定期的に金利が見直されるタイプの住宅ローンです。金利は半年ごとに見直され、5年ごとに返済額が変更されます。
見直し後の返済額は前回の125%が上限となっている(125%ルールという)ため、金利がどんなに上昇していてもそれ以上は上がりません。
つまり当初10万円の返済額だった場合、金利がどんなに上昇しても12万5千円が次の5年の返済額の上限となります。この場合、それ以上に金利が上昇してれば、次回の見直しで金額に反映されることになります。
変動金利型の最大のメリットは、金利が低いという点です。
途中で金利が上昇しなければ、低金利の恩恵を受け続けることができます。
それどころか、途中で市場金利が下がって返済額が下がる可能性もあります。
ただ、ご紹介したように金利が上昇すると毎月の返済額も上昇してしまいます。
返済額が大きく上昇すると、生活が苦しくなるかもしれません。毎月の返済額がどうなるかわからないので、返済計画が立てにくいというデメリットもあります。
「共働きで収入が多目」「預金に余裕がある」「頭金を入れたので毎月の返済額が少ない」といった方は、繰り上げ返済などの選択肢があり、途中で返済額が変わってもあまり家計に大きな影響を受けません。そのため、設定金利が低い変動金利型が適しているといわれます。
固定期間選択型は、「当初〇年間は金利●%」というように、契約時に決めた固定期間の間は金利が変わらないタイプです。
固定期間は3年、5年、10年など。固定期間が終了すると、新たな固定期間を選びます。
新たな固定期間にはその時点の金利が適用されるため、返済額が大幅に変わる可能性もあります。また、固定期間選択型には変動金利型と違って、125%ルールが適用されません。そのため、極端な例としては返済額がそれまでの倍になる可能性もあるわけです。
固定期間選択型のメリットは、半年ごとという短いスパンで金利が変更されないため、固定期間の間は返済額が確定するという安心感があることです。ただ、固定期間終了後の返済額変動リスクは、むしろ変動金利型より大きいかもしれません。
変動金利型と同じく収入や預金に余裕のある方か、公務員など安定した昇給が見込める職場で働いている人に向いているタイプだといえるでしょう。
住宅ローンには民間の金融機関だけでなく、住宅金融支援機構という公的融資もあります。
また、人によっては財形住宅融資制度が利用できることも。それぞれの特徴についてご紹介していきましょう。
銀行や信用金庫、保険会社、農協といった、民間の金融機関が提供する融資制度です。
不動産会社やハウスメーカーによっては、金融機関と協力して「提携ローン」を提供していることもあります。提携ローンは一般的な住宅ローンより金利が低く設定されていることもあるので、確認してみましょう。
金利はもちろん、融資の限度額や保証料、手数料などが金融機関によって大きく異なります。自分に合った住宅ローンを選ぶにはそれらも含めて比較しなければなりません。
住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供する、公的融資制度です。
全期間固定金利型の住宅ローンで、最長35年の全返済期間にわたり金利が変わりません。
さまざまな金融機関の窓口で取り扱いがあり、必要書類や事務手数料などが金融機関によって異なります。
民間の住宅ローンと違って、保証会社に支払う保証料がかかりませんが、取り扱い金融機関に支払う融資手数料がかかります。
また、フラット35の大きな特徴に「購入する物件に対する技術基準」があります。
適合証明機関や適合証明技術者による建物の検査を行い、建築基準法に適合していることを証明する「適合証明書」の発行を受けなければなりません。
ちょっと面倒に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、しっかりとした検査を受けられるので安心です。
勤務先の財形貯蓄制度を利用し、1年以上貯蓄を続けてきた人が利用できる、持ち家取得のための融資です。申込日前2年以内に財形貯蓄の預け入れを行い、申込日の時点で貯蓄残高が50万円以上あるなどの要件が定められています。
やはり住宅金融支援機構が運営している制度で、借り入れのためには技術基準を満たしている建物である必要があり、検査を受けなければなりません。
財形融資は企業の福利厚生の一つであり、会社を通して申し込むため保証料や融資手数料がかからないというメリットがあります。
借り入れのためには一定期間準備が必要な制度なので、勤務先の会社に財形融資制度があるか確認し、利用する可能性がある人は早目に申し込んでおきましょう。
住宅ローンは世帯主が単独で借り入れることが多いのですが、場合によっては夫婦や親子、共同の名義で借り入れることもあります。
単独ローン以外の借り入れ方法の種類と、それぞれの注意点についてご紹介しましょう。
夫婦がそれぞれ別の住宅ローンを借り入れ、合計で住宅の購入資金を用意する方法です。
単独ローンと違い、二つの契約を結ぶことになります。
共働き世帯で夫にも妻にもそれぞれ収入がある場合に利用する制度です。
それぞれが住宅ローン控除を受けることができ、節税に繋がります。また、それぞれの年収に応じて審査されるため、単独で借りるよりも多くの金額を借りられます。
ただ、契約ごとにかかる事務手数料や印紙税などの費用は倍かかってしまうことに。
さらにたとえば妻が出産や育児で仕事を辞めると、それ以降は住宅ローン控除が受けられません。
住宅ローンの契約者のほかに連帯債務者を立て、連名で住宅ローンを契約する方法です。
夫が契約者で妻が連帯債務者となる場合、それぞれが債務を負うことになります。
単独ローンと同じく1契約なので、諸費用はあまりかさみません。
さらに連帯債務者も債務を負うため、住宅ローン控除を受けることができます。契約者と連帯債務者の返済能力を合算して審査されるため、単独ローンよりも借入可能額が増やせます。
ただし、連帯債務を取り扱ってくれる金融機関はあまり多くありません。
連帯債務者は団信に加入できないことがあります。フラット35なら加入できますが、団信特約料が単独の場合の+0.18%になるので注意しましょう。
単独ローンと同じく契約者が返済していきますが、返済が滞った場合は連帯保証人に返済する義務が生じます。債務者が死亡した場合、団信が適用されるので連帯保証人を含めてその後の返済義務は生じません。保証会社の保証もつけるので、保証料が必要です。
住宅ローンの金利タイプや借入先金融機関、借り入れ方法などについて、それぞれの特徴を交えてご紹介しました。
住宅ローンは長期間にわたって返済するものなので、ちょっとした違いで負担が大きく変わってくることもあります。それぞれを把握しておき、自分に合った住宅ローンを選びましょう。迷ったときは、お気軽にご相談ください。